第一に高齢者の最大の特徴は、一人が複数の慢性の多臓器の疾患に罹患していることが多いということです。西洋医学では病名に対応して薬剤が投与されるために投与される薬剤の数が多くなり、そのための副作用が出やすくなる。一方漢方治療では一つの薬剤が多くの薬効を有しているので、投与する薬剤が少なく済みます。また、西洋薬に比し、重篤な副作用が少ないので、長期投与に適しているという特徴があります。
第二に高齢者では個体差が極めて大です、西洋医学ではこの個体差にあまり注目せずに薬剤を投与するが、一方漢方治療では患者の“証”に合った薬剤を投与します。すなわちケース・バイ・ケースの対応をするという特徴があります。
第三の高齢者の特徴は生体防御力が低下しており、感染症や悪性腫瘍に罹患しやすいということです。西洋薬には免疫賦活作用を有する薬剤が少ないが、漢方薬の中に柴胡剤のような免疫賦活作用を有する薬剤が多いという特徴があります。漢方医学の考え方として、病気に勝つためにまず体の免疫力、抵抗力を高める必要があり、そのため沢山の補剤が存在します。
第四の特徴は高齢者では自覚症状はあるが他覚的所見に乏しく、診断がつかない症例がしばしばあるということです。西洋医学では診断がつかないので対応が困難であるが、漢方治療では“証”として捕らえ、対応できるという特徴があります。また体にやさしいため高齢者に適していると考えられます。